カオス的変化の中で生きる現代人の生存戦略

【1か月で激変する価値観】

これまで価値観の変化は長い時間をかけて、ゆっくりゆっくりと浸透し変化していくものでした。

しかし、トランプがアメリカ大統領に就任してから、まだ僅か1か月と少しだというのに、さまざまな分野で変化が起きています。

各国や各企業が目標に掲げていたSDGsについても、逆回転する大手企業が見られるようになりました。たとえばトランプ政権がパリ協定からの再離脱を表明すると、ゴールドマン・サックスなどの大手金融機関は、脱炭素を目指す国際的銀行連合から脱退し、石油産業などへの投融資を強化しています。また、アメリカ国内の企業も、化石燃料の生産を拡大しています。

たった1年半ほど前に、気候変動会議(COP28)で、日本は未だに化石燃料に大きく依存しているとバカにする意味で「化石賞」が贈られ、日本の政治家が「恥ずかしい」と述べていた記憶がありますが、その恥ずかしい方向へ、アメリカは動き始めました。

またSDGsの目標である「多様性」についても、トランプ政権は連邦政府のDEI(多様性、公正性、包括性)プログラムを終了する大統領令に署名しました。

これにFacebookのメタやAmazon、マクドナルドなどの大企業が追随して、多様性を推進する施策の中止を次々に発表しています。

 

ウクライナとロシアの戦争についても、この3年間、日本を含む西側諸国はウクライナの支援を行ってきましたが、トランプはウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙なき独裁者」と重ねて呼んで強く批判し、ロシア寄りの発言を続けています。

またトランプは国連やNATOに対して懐疑的な姿勢を示しています。余談ですがトランプはWHOからの脱退も表明しています。

僅かな期間で、これまでの価値観を否定し、社会の方向性を変えようとしています。

このカオス的変化の社会に、多くの人が戸惑いを感じているかと思います。私もその一人です。

 

【変化の時代には、選択肢を複数持っている者が強い】

私の肌感覚では、つい1,2年ほど前までだと思いますが、「トヨタはいつまでもハイブリッド車に拘ったり、水素自動車に手を出してみたりして、肝心の電気自動車(EV)へのシフトが遅れている」として、多くの批判を受けていた記憶があります。

それが近年、EV車にさまざまな問題が浮上し、EV市場の成長が急激に鈍化し、最近はまたハイブリッド車の需要が高まっているそうです。

日産が窮地に陥っている要因の1つが、「ハイブリッドを一切無視し、完全にEV車へ移行を加速させたこと」と昨年末に批判されているのを見て、こんなに不確実性の高い社会で一点張りすることのリスクを感じずにはいられませんでした。

隣人が、マスコミが、皆が、社会が「こっちに進むぞー!!」と走っていても、数カ月でコロッと変わってしまう社会なのです。現代は。

 

また、トランプが自動車関税を現在の10倍の25%にするとの見通しを示していますが、アメリカ国内に完成品の工場を持っている自動車メーカーは、影響は少なくてすみます。

トヨタは世界中に工場があり、もちろんアメリカにも沢山の工場を持っているので、関税の問題や地政学的な問題が起きても、軸足を移せば対応することが可能です。

「トヨタが一人勝ち」と言われる成功の一因は、さまざまな面で幅広い選択肢を持っていることにあると感じます。

 

【企業も個人も選択肢を複数持とう】

トランプ政権になってから、「未来を予測することなんて無理だな」という思いが益々強まりました。そして一点張りすることのリスクを益々感じます。

選択肢を複数持って、時代の変化に合わせて軸足を変えながら、柔軟に迅速に変化し続けるしかないなと感じます。

個人の生き方に関してもそうです。

一旦話が逸れますが、私が人から言われて、がっかりする言葉の一つがコレです。

「やったことないので出来ません」

この言葉を発した瞬間、自分の可能性を自分で潰しています。

「今の小学生たちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」という予測があるそうです。

今自分がやっている仕事は、5年後10年後には、もう世の中には無いかもしれません。これほど変化が激しい社会を、「経験がある仕事」という手持ちの札だけで生きて行こうとすれば、みるみるうちに選択肢は減る一方です。

やったことが無い業務にも、どんどん挑戦すれば、手持ちの札は増えます。

転職する時にも「こんな経験もある。こんな業務も、あんな業務もやった。こんな役職にも就いていた」と自分を売込むことも出来ます。経験は自信にもつながります。

近年、リスキリング(新しいスキルや知識を学び直すこと)の必要性が叫ばれおり、政府も支援金を出すなどしていますが、実際のところ、何を学んだら良いのか分からない、学びたいものも無い・・・と思う人も少なくないはずです。

そんな場合は、まずは今の会社で求められているスキルを学めば良いのではないでしょうか?そうすればお給料も上がるかもしれません。そのスキルを持って転職することも可能でしょう。

カオス的変化の中で生きる現代人の生存戦略は「選択肢を増やすこと」だと私は思います。選択肢を増やすために、失敗を恐れず、どんどんやったことがない事や仕事や業務や役職にも挑戦していってほしいと思います。そうして自分の手持ちの札を増やせば、社会が変化しても生きていけます。

「やったことないので出来ません」は自分の可能性を自分で潰す言葉です。

誰でも最初は「やったことが無い」のです。たくさん失敗したり、赤っ恥をかいたり、周りに迷惑をかけたりしながら、「最初から何でも出来たベテランです」みたいな顔をしているわけです。

私だって、テキスタイル事業も、クリーニング事業も、繊維再生事業も、シニア事業も、社長業も、全部やったことはなかったです。笑