泉州地場産業、復活のチャンス到来?!

【EUは再生繊維を使わない製品を市場から排除する方針で、日本も対応を急ぐ】

先月、当社の繊維再生技術>>についてプレスリリースをさせていただきました。

想像以上の反響があり、繊維リサイクルについての社会の関心の高さに逆に驚かされました。

今年9月の日経新聞の記事に「欧州連合(EU)は再生繊維を使わない製品を市場から排除する方針で、日本も対応を急ぐ。」という記事がありました。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2660E0W3A920C2000000/

「市場から排除」という言葉は、かなりインパクトのある言葉で驚きました。

欧州の有名なファストファッションブランドであるH&Mを偵察がてら最近覗いてみましたが、驚いたことに、私が見た限りほぼ全ての商品が再生繊維(ペットボトルからの再生など)を使用されていたものに置き変わっていました。

再生繊維が何パーセント使用されているのかが一目で分かるように、商品1点1点にそれぞれ大きな紙のタグも付けられていました。

欧州ブランドの変化の速さに衝撃を受けながら、その足でユニクロに向かって様子を伺いましたが、ダウンのリサイクルをしていた以外は、軽く見た範囲ではこれといった変化は無い様子。日本はまだまだかと思っていましたが、HPを見てみると「ユニクロは2030年度までに、全使用素材の約50%をリサイクル素材などに切り替えることを目標にしています。」と書かれていました。

https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/planet/products/material/recycle/

日経平均に最も影響を与えているユニクロ(寄与度1位)が、このような目標を立てているわけですから、きっと他の企業も同様に続くのではないでしょうか。

そう考えると日本の繊維リサイクルの市場について期待が持てそうです。

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【石油は、あと約50年で使い切ってしまう】

この半世紀で急激に地球環境が変わりました。人口減少の日本にいると実感が湧かないですが、50年前と比べて地球の人口は2倍の80億人になりました。2050年までにほぼ100億人に達する見込みだそうです。

そして天然ガスや石油は、新しい資源が発見できなければ、今の資源は約50年で使い切ってしまう予測だそうです。

また地球の気温上昇を1.5度未満に抑えるという世界の目標を達成するためには、原材料調達やゴミ廃棄で排出されるCO2の削減についても減らしていく取り組みが進められています。

このような環境ですから、今リサイクルが注目されています。

今後ますます様々な業界で、ものづくりの時点から、捨てなくて良いものづくり、資源も最小限で済むものづくりを設計することが求められるようになります。

しかし繊維to繊維のリサイクルは難しく、これまでなかなか進んできませんでしたが、アパレル業界も、リサイクルしやすいように単一の素材での服づくりを増やすなどの取り組みなどもされているようです。

 

【泉州の地場産業。リサイクル技術“反毛”】

泉州地域の地場産業は古くから繊維産業が中心となり発展してきました。

特に泉南地域では風雨の影響を受けにくい温暖な気候と砂地であるという特性を生かして戦前までは綿花の栽培が盛んでした。

そのようななか、使い古された和布団や座布団等の中綿を取り出し、表面を引っ搔いて再び毛羽立たせて柔らかくふわふわした風合いに戻し、バージンの綿を一定量加えて、再び綿製品に戻す、和布団の打ち直し等が反毛技術の始まりです。

この技術は江戸時代に中国から伝えられたとされ100年以上の歴史があり、泉南の反毛綿は品質が高く、当時は大阪や京都などの都市部で人気があったそうです。

明治時代になると、反毛技術は機械化され、さらに生産性が向上しました。

戦後は資源不足によってリサイクルの需要が旺盛で、作れば売れる時代でした

しかしその後、化学繊維や合成繊維の普及により、反毛綿の需要は減少し、さらに高度経済成長期以降はグローバル化によって安価な輸入品のバージン製品が普及し、大量生産大量消費時代になり、リサイクル技術である反毛は、急激な衰退を余儀なくされました。

残った反毛業者は、新たなる需要と販路を模索しながら反毛機に改良を加え、主にフェルトや軍手を製造するようになりました。

しかしフェルトに変わる新素材の登場や、軍手編み機の高速化(反毛綿混の糸では高速化織機の強みを生かせない)などで、既存販路での需要は減少しつつ、反毛業者の数はさらに減りつつあります。

しかしこの先、資源循環の意識が高まり、リサイクルの需要が増えれば、設備投資して高度な反毛技術(出来るかぎりバージンに近い形に繊維を再生する)を行う事業者も増えるのではないでしょうか。それには補助金などの政策的な支援も強化していただければと考えます。

当社が今回、設備投資を出来たのも、ものづくり補助金の助成を受けられたからです。

 

【泉州の地場産業。毛布】

日本で毛布を製造しているのは、ほぼ泉州だけです。 国内製造品出荷額等で 90%を超えるシェアを有します。

泉州の毛布製造は専門の事業者の分業制になっており、染色、紡績、整経、織、検反、起毛、縫製、梱包加工まで地域内で一貫生産を行う体制があります。

当社だけでも、これまで30年以上にわたり、1000以上の官公庁や企業に販売した災害用備蓄毛布の数は500万枚以上にのぼります。真空パック加工の工程のみで携わった数も合わせると1000万枚以上です。これらの毛布も、いつかはゴミになります。

しかし災害用備蓄毛布は難燃素材で製造されているため、燃やして処分することは出来ません。

産廃で埋め立てるには高い処理費用がかかります。また、ゴミの埋め立て地は飽和状態に近づいています。社会の環境意識が高まりつつあるなか簡単に捨てることは出来ません。

これらの毛布をゴミにせず、新しい毛布の原料にすれば、省資源、CO2排出削減、ゴミ削減において貢献できます。

「捨てずに再生」が日本の新スタンダードになれば、輸送コストやそれにともなうエネルギー量やCO2排出量を考慮すれば、国内で資源循環するのが一番効率が良く、そうなれば繊維産業の国内回帰が期待できるのではないでしょうか。

 

また環境配慮の点から、製品の長寿命化についても企業は求められています。

価格の面で輸入品に負けたとしても、各工程ごと専門の職人さんたちによって作られている日本製の毛布は品質や耐久性が高く、色落ちしにくく、長寿命という点において競争優位性が高いです。

大量生産・大量廃棄の時代には安さは大変大きな競争力だったかもしれませんが、サステナビリティが重要視されるこれからは違うと私は信じています。

 

【最後に】

泉州地域の繊維産業は、歴史的にも現在も、日本の繊維産業において重要な役割を果たしてきました。しかしこの20年間、輸入品に市場を奪われてきました。

サステナビリティの意識や資源循環の需要がもっと高まり、それにともなって泉州地域の地場産業が復興を遂げることを期待しています。

<お知らせ>

繊維再生工程の動画が完成しました。よろしければご覧ください。