令和が始まった時、現在のコロナ禍を予想していた経営者がいったい何人いたでしょうか?
自分の会社が台風や地震で被災する未来を、本気で想像したことがある経営者は?
恥ずかしながら私は、当然の備えとして防災の備えはしていても、自分が本当に被災することになった2018年の8月まで、自社が被災する未来を、現実感を持って想像したことはありませんでした。
というのも、当社があるここ泉南市に私は約60年近く暮らしていますが、これまで大きな災害に遭ったことは1度もありませんでした。
【被災体験】
関西国際空港連絡橋にタンカーが衝突するなど、近畿地方を中心に甚大な被害を出した台風21号が通り過ぎた後、私は自社の被害を確認するために、まだ暴風が時折吹く中、工場に向かいました。
2階建ての工場の屋根が捲れ上がり、一部無くなっていることに気づき愕然としました。合計で工場4棟、倉庫2棟、テント倉庫1棟がそれぞれ被害の大小はありますが被災しました。テント倉庫に至っては柱だけが残されている状態で、我が目を疑い、乾いた笑いが出てしまいました。
数日間停電し、電子機器は故障し、固定電話は使えない状態でした。
応急措置や関係各所への連絡、工事の手配など、早急にやらなければならない事が山のようにありました。それと並行して他の事業部の応援に行ったり人員を振り分けたり、体がいくつあっても足りません。復旧に向けて優先順位を付けるのも一苦労でした。
有難かったのは各事業部のリーダー達が指示待ち族にならず、自ら判断して行動してくれたことです。それでも経営者にしか決められない事や経営者しか対応出来ない事も沢山あり物凄く多忙でした。
この時の当社には、防災対策や危機管理マニュアルはあっても「事業継続」を明確な目標としたBCPというものは無かったのです。(関連記事:台風21号>>)
【損害保険】
資金面だけではなく、心理的にも私の一番の大きな救いになったのは「損害保険」です。
私は不安症な性分の為、保険は万事抜かりなく備えています。そこにコストを掛け過ぎているのでは?と言われることもありますが、コストカットを優先して運や自然に会社の行く末を任せるような事はしたくありません。
地震・洪水・台風などの自然災害をはじめとした脅威に襲われたとしても、事業を早期復旧させ継続していくのが、経営責任だと考えています。その為には保険は欠かせないものです。この時、改めて実感し、長年 保険をかけ続けていて良かったと心底思いました。
【BCP→BCMS→ISO 22301】
今、世界でも日本でも、気候変動の影響で、100年に一度と言われていたような災害が頻繁に発生しています。
次また当社が被災した時には、前回の反省点を教訓とし、より効率的で効果的な対応が出来るように事業継続計画(BCP)を策定しようと思いました。
BCPがあれば、各事業部のリーダー達も、逐一私に判断を仰ぐ必要もなく、不安を持ちながらの自己判断でもなく、合理的な根拠に基づいて行動を順次起こせると思いました。私自身も意思決定がしやすくなります。
しかしただ事業継続計画を策定するだけでは、いざという時に計画倒れになってしまう可能性があります。BCPを従業員に浸透させ、定期的に改善と最適化を組織的に行うシステム(BCMS)を構築したいと考え、どうせやるならばとBCMSの国際規格であるISO 22301(事業継続マネジメントシステム)の取得を目指し、この度、皆様のお陰で認証を取得することが出来ました。
災害発生後からの事業再開が遅くなればなるほど、お取引先を失うリスクも高まります。
また、これだけ自然災害が増えて来ると、ESGやSDGsと同様に、BCP策定の有無がビジネスパートナーの条件になる未来も近いと考えています。
またそのBCPも専門の第三者機関が審査した国際規格となると、当社の強みにもなると考えています。
また当社のテキスタイル事業部は、主に官公庁向けの災害用毛布を製造しているという特色から考えても、災害から早期復旧し、いち早く物資を社会に供給することは当社の使命でもあり社会的責任でもあると考えています。
たえず見直しをしながら、来たるべき危機に備えてまいります。(できればもう2度と来て欲しくないのが本心ですが)。