雇用調整助成金の延長
当初は9月末までとしてきた雇用調整助成金の特例措置でしたが、政府は今月25日、現行の助成率や上限額のまま12月末まで延長する方針を固めましたね。
日本の失業率は3%ほどで、10%を超えるアメリカに比べると低く感じますが、休業者は400万人を超えています。雇用調整助成金が当初の予定通りに9月末で切られていたら、その400万人を超える休業者はそのまま失業者となり、失業率は戦後最悪の水準6%台に乗る可能性があるそうです。
そこまでの失業率になると深刻な社会不和が生じますから、延長の方針が決まりひとまず安堵しました。しかし12月末以降はどうなるのでしょうか?
追加の特例措置延長にならなければ失業者が急増しますが、政府の財源はいつまでもつでしょうか。
機械化による雇用の減少
先日コンビニエンスストアのレジで、前の高齢者の会計が終わるのを待っていると、レジのスタッフに「お支払が電子マネーなら、向こうのセルフレジでお願いします」と言われました。
セルフレジを使うのは初めてだったので少し心配になりましたが、初めての人でも問題なく使用できる分かりやすいシステムで、これは益々広がって行くだろうなという感想を持ちました。
また、こんな話を聞きました。
「ユニクロの店員さん、あれだけ沢山いたのに、先日行ったら一人だけになっていて、レジはカゴを置くだけで会計してくれる自動レジになっていた」という話でした。
完全雇用の限界→ベーシックインカム
ドイツでベーシックインカムの社会実験が始まるそうです。(現在のところ120名での実験で、1カ月約15万円を3年間給付)。
ベーシックインカムとは、政府がすべての国民に対して、最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件に定期的に支給するという政策です。
これは生活保護や年金、失業保険などの社会保障が複雑になり過ぎたため、それらをまとめ簡素化するのが目的だそうです。
フィンランドも試験導入を行い、スイスも導入の国民投票を過去に行っています(否決)。
世界がベーシックインカムに注目しているもう一つの理由は、機械化やAI化により、就業を希望するすべての人が雇用される「完全雇用」を維持するのが難しくなって行くからだそうです。
必要なのは機械よりも人
ほんの少し前まで日本では人手不足が叫ばれていたのに、今は失業率の増加が懸念されています。
とはいえ生産年齢人口が減少し続けている日本ですから、コロナ禍が落ち着き景気が上向けばまた中小企業は採用難に苦しむでしょう。
当社のテキスタイルの工場でも、従業員を新規採用する代わりに機械の導入を検討していました。多い時には1日に3000枚の毛布を畳む必要があるので、それをオートメーション化しようと考えたのです。
しかし誰も想像出来なかったコロナ禍が発生しました。
当社は多角経営なので、コロナの影響を受けてホテルや旅館向けの毛布の需要が減っても、九州豪雨によって河川工事用の土木資材の需要が増えるなど、凸凹があります。
当たり前ですが、毛布を畳む機械は毛布しか畳めません。それが人ならばフェルト事業部の仕事もフレスコ事業部の仕事も、それ以外の仕事だって教えれば出来ます。
先が読めないような不確実性の時代には、時代に合わせて企業も事業内容の変化や経営資源の配分を変化させて行かなければなりません。
想像も出来なかった出来事へ対応する柔軟性を持たなければ生き残れません。
不確実性の時代には、「生産性」よりも「柔軟性」が大事。
だとしたら、中小企業である当社に必要なのは、やはり機械よりも人だなと思ったコロナ禍なのでした。