一時期、新聞やTVを『大塚家具の父娘戦争』が毎日のように賑わしていた。
親子の恥をわざわざ株主総会という公の場に晒して、投票で賛否を問うような話では無かったように思うのである。
しかし見方を変えて見てみると、この問題が仮に親子の感情論抜きの「経営陣同士の戦い」に終始していれば、素晴らしい戦争であったろうにと思う。
なぜならば大塚家具は「大塚ブランド」を打ち立て革新的な販売方法で売り上げを伸ばしてきたが、
「時代の流れとともに変化する経営環境・消費者指向に今後どう対応していくべきか?」という、
大小を問わず全ての企業が模索していかなければならないテーマを問うていたからである。
ここで経営の勉強命題として、もしも私が大塚社長(娘)であったならば、どうするか?
考察してみることにした。
1、ブランドは一朝一夕で出来るものではなく、「高級家具といえば大塚家具」と皆が思い浮かべるほどしっかりと市場に根を下ろした大塚のブランドイメージを、安物を売ってむやみに低下させてはいけない。またこのことはブランドイメージだけでなく過去に大塚ブランドを購入してくれたお客様に対する企業としての責任と義務でもあろう。
そのためにも、一般大衆に向けた低中価格帯の「対抗ブランド」を新たにつくる。
そしてこちらのブランドでニトリやイケヤに対抗し、「大塚家具」は従来路線のまま高級志向でいき、威光ブランドを守る。
2、採算が微妙な富裕層人口の少ない地方の店舗は、対抗ブランドに変更する。
ただ大塚家具は広い面積の店舗がほとんどあるから丁寧な市場調査の上、富裕層の割合によっては面積を分け「大塚家具」と「対抗ブランド」の両方を構える。
ブランドの差別化を図るためにも完全に独立したそれぞれ別の店舗という体をとり、入り口や会計・接客方法を変える。
3、富裕層人口の多い主要都市(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)の既存店舗は従来路線のまま高級志向でいき、威光ブランドを守る。豊富な品揃えが大塚家具の強みでもあるので、対抗ブランドと面積を分けるなどはあえてしない。
4、採算が取れていない地方の店舗は即廃店させ、主要都市に残した従来店舗(3、)のなるべく近隣に、出来るだけ初期投資を抑えて対抗ブランド店舖を新に構え、一般大衆を取り込む。
こんな感じはどうだろうか? これなら創業からのイメージや企業ブランドも守れるし、今まではニトリやイケアに流れていた低中価格帯志向の消費者を取り込むことも出来るのではないだろうか。
しかし、今回の騒動で結局は勝ち負けなど存在しなかったように思う。
最大の被害者は企業としてのイメージを落とした法人としての「大塚家具 株式会社」というブランドではないだろうか。
騒動の渦中においては、経営者としては最も忘れてはいけないはずのお客さま・仕入れ先・社員や株主の皆さまの存在は、忘れ去られていたように思う!