30数年来の古い友人から、「営業とは何か?」と質問を受けた。
この友人は、大学を卒業後に営業とは全く無縁の職業を30年間勤めた人物である。
訳あって、52歳になってから営業の仕事をするようになった。
「立花にとっては何を今さらの話かもしれないが、俺は営業という仕事は生まれて初めてなんや!どうしたら売れるのか秘訣を教えてくれ!?」と言われた。
友人の声からは、彼が営業での行き詰まりを感じている状況なのが即座に伝わって来た。
「実は俺も未だに営業とは何かよくわからないというのが現状や!刻々と変化していく顧客のニーズや社会情勢また商材の流行り廃りについて行くために、自社の営業戦略を随時タイムリーに考えるだけで精一杯なんや!それに今日うまくいったことでも、明日はもう役立たないことがほとんどなんや!」
と答えた。
しかし本人の鬼気迫る気迫を前に、それだけでは納得してもらえないことは感じていたので、
「お前の役に立つか解らないが・・・」と、断りを入れてから話を始めた。
その時の内容に付け加えて、ここで改めて営業についての自説を書こうと思う。
情報の集積・把握、分析、顧客への伝達方法の工夫など、そういった具体的な内容はココでは省き、ヒューマン的なことに限定して述べたい。
ずばり営業とは、製品を売る前に「己自身」を売ることではないだろうか。
「買いたい」と最初から思ってくれているお客様は別として、私は営業に行っても8割以上が世間話だ。訪ねた先で仕事に全然関係のない世間話で盛り上がってしまい、結局仕事の話を一切しないまま予定時間が過ぎてしまって帰る時もある。
要は、はじめは様々なコミュニケーションの舞台を通して、まず自分に関心を持ってもらうこと。
ちなみに、私の場合は特に、柔道で潰れた両耳とマウンテンゴリラ並みのデカい図体がキャラクターとして、すこぶる役に立つ。
初めてのお客様との会話は、ほぼここから始まると言っても過言でない。
私に無関心なお客様は、私がどんなに熱心に商品説明をしても、関心の無い相手の説明などほとんど頭に入れてくれない。
逆に、私という人間に興味を持ってくれて、信頼関係が築けたお客様は、「あんたの商品なら、だいじょうぶ」と、商品の説明すら遮られたりすることもある。
それとコメツキバッタみたいにペコペコしながら媚びるような態度で契約してもらうのは、本当の営業ではない。そこに信頼関係は無いので、良い条件を提示する他社が現れれば、すぐに契約が終了してしまう。
また当社には営業だけを専門にやっている者は居ない。
普段は製造業務に就いていて、必要に応じて営業マンになる。
はじめは製造部門の人間に営業が務まるだろうか?と心配もあったが、商品の事を熟知しているだけあって、どんな質問にも即座に答えることが出来、そういった面が信用に繋がるのか、大変よく売って来てきてくれるので驚いたほどである。
ここからは経営者としての考えだが、経営者は営業マンが営業しやすいように、部下を信頼して権限を委譲することが必要である。
例えば当社の場合、能力のある社員には
「失敗してもいい。失敗したら私が全部責任を持つから、自分の思うようにやってみろ」
と常々言っている。(ここでの失敗は実は単純な失敗ではなく次へのステップなのである。)
権限を委譲する理由の一つは、金額や納期を初めとしたお客様の要望を「一旦、社に持ち帰って相談・・・」と度々なってしまえば、その営業マンは単なる伝書鳩という位置づけになってしまい、お客様と営業マンの間に信頼関係が築けなくなってしまうからだ。
最後に、『当社の商品を大変よく売って頂いたお得意様の営業マンの話』を2年ほど前にブログに書いたので、もう一度ここで紹介させて頂きたい。