昨年の晩秋の頃の話だが、旧知の仲である経営者の来訪を受けた。
来意は、「経営者としての取り組みも虚しく、社員の高齢化と求人難による人手不足で生産性が低下し、経営が苦しい。倒産して人に迷惑をかける前に廃業しようと思う。ついては会社や社員、お得意さまごと買い取ってほしい」
との申し入れであった。
既存事業の技術力や販売力などを有効活用できる分野であれば返答を悩んだかもしれないが、ノウハウも人脈もない業種であった為、丁重にお断りさせて頂いた。
その際、少しでもお役に立てればと思って、人手不足の解消策として、外国人の雇用はどうか?と提案させて頂いた。
ところで昨今、日本では野球、大相撲、サッカー、ラクビー、陸上競技、柔道をはじめスポーツ界全般において、以前にも増して外国人選手を多く見かけるようになってきた。
また彼らの活躍に伴い「外国人選手が強すぎて、日本人の活躍の場がない。外国人ばかりが活躍して面白くない」との意見をちょくちょく聞く。
また、日本人選手が出場機会を奪われることによって実戦経験が積めず、国内の選手が育たなくなるとの声も聞かれる。
しかしそのことを嘆くよりも、今の日本人がどこかに忘れて来てしまったハングリー精神を彼ら外国人選手から見習うことに、価値があるのではないか。
スポーツ選手だけではなく、日本に働きに来ている外国人労働者についても同じことが言える。
母国を離れ日本で一旗あげてやろう!と思う外国人たちは、現代の過保護に育った日本人と比べると、モチベーションが高い。
出世なんて興味がない、いい車なんて必要ない、休みが多くて、早く帰れるラクな仕事に就きたいというようなハングリー精神を失った日本の若者にとって上昇志向の強い外国人の存在は良い刺激になるのではないだろうか。
実を言うと、ある時まで私は、外国人労働者は日本人に比べると勤勉さでは劣るだろうと、島国根性で偏見を持っていた。
しかし実際に外国人労働者を採用している知人の会社で、彼らが一生懸命に働く姿を見て以来、外国人労働者に対する意識が変わった。
しかしそうは言っても日本人にも色んなタイプの人間がいるように、外国人労働者にも色んなタイプの人間がいる。
しかし日本で出世できる外国人に共通していると思うのは、日本語を習得して、日本の文化に積極的に馴染もうとする人である。
卵が先かニワトリが先かのような話で、
日本語が出来たから出世できたのか?出世できるような努力家だったから日本語も習得出来たのかは分からないが、言葉を話せるということは、上司からの話やアドバイスも、言葉が話せない人より深く理解出来るということであるし、技術の習得も、そのぶん早く出来るという事である。
つまり、話せる人(出世する人)と話せない人(出世しない人)の差の一つは、情報量の違いなのではないだろうか?
そして情報量の違いが出世に現れる・・・というのは、もちろん日本人にも通じることである。