私の曽祖父である「竹松じいさん」は、明治時代に地方村相撲の覇者だったそうで、位は大関(横綱の呼称は当時、プロ力士しか使用が許されていなかった)であった。
地元のお寺の記録によると、竹松じいさんは、6尺3寸、30貫、今でいうと約190cm、120㎏ほどの大男であったらしい。
当時の日本人男子の平均的な身長が約155cm体重約50㎏から考えると、まさに飛び抜けた大きさであっただろう。
私が後援会会長をさせて頂いている全日本柔道選手権準優勝の石井竜太選手がたぶんこれに近いくらいだろうか!?
母は生前、前記のご先祖さまの話を私に聞かせてくれながら、「毎日、最低2回は背伸びをしなさい。そしたら、あなたも必ず180cmを超えて、竹松じいさんのように相撲の強い男になれる。」と言っていた。母は、よほど私に竹松じいさんのような男になってほしかったのか、それは私が幼稚園児から中学生になるまでの間、幾度も聞かされた。
私は気が向いた時にしかその言い付けを守らなかったが、遺伝子の影響もあってか、中学3年生の身体測定で180cmを少し超えることができた。
きっと母は大喜びすることだろう!と勇んで報告に行くと、母は、少しばかり微笑みながら一言だけ褒めてくれたあと、今度は逆に厳しい顔を作って「体も態度も、もう充分大きくなったし、もう背伸びはしなくていい。これからは、人間として背伸びをしなさい」と言ってきたのである。
中学生の私は、母のその言葉の真意を即座には理解できず、意味を聞いてみると、以下のようであった。
自分の能力の範囲内のことだけをしていると、人は成長出来ない。
大人から見たら、背伸びをしているように見えても、若いうちは沢山恥をかいたら良い。
人は背伸びをすることによって成長出来るのだから、自分の能力以上のことだと思っても「出来ません」じゃなくて「出来ます」と言いなさい。
そう言ってしまえば、本当に出来るようにならないと面目を失ってしまうから、カッコつけのお前は一生懸命にやるだろう。
知らないことでも「知っています」と言いなさい。そして、そう言ったからには、そのあとには図書館に調べに走りなさい。そうしたら、嫌でも一つ賢くなれる。
こんな事が出来るのは若者の特権。若いうちは、知ったかぶりがバレても、謝ったら許してもらえる。
だから、いつも自分の能力以上に背伸びをしなさい。・・・と説明してくれた。
これは社員教育にも通じるだろう。
成長を期待出来る社員には、現在の能力以上の背伸びが必要な仕事を任せ、上司は、それを支援して行くほうに回ることで、社員の潜在能力を引き出すことが出来る。
背伸びをしている間は、本人もそれを支える周りも大変であるが、いつしか身の丈が伸び、足底がピタリと地に付くようになるだろう。それが人としての成長だろう。
今この記事を書きながら、自分の若い時代を振り返ってみれば、母の言葉通り?!、常に背伸びをしており、身の丈に合わないような大きな言動をする生意気で憎たらしい人間だったように思う。
沢山の方々に迷惑と不快感を与え続けて来たような気がする。
正直言うと52歳になった現在でも日々、背伸びをしている状態である。しかし、この背伸びで自身を成長させ、これまでに私を支えてくれた皆様に「恩返し」が出来るよう、粉骨砕身の覚悟で励んでいる次第であります。