安倍晋三内閣の経済政策「アベノミクス」は、タイムラグがあったものの株価を上昇に転じさせ、円相場も円安基調に向かい始めて、重苦しい停滞した景気を、それなりに回復方向へ好転させ始めたと思う。
安倍総理が言うように大胆な金融緩和と政府の各種財政投融資額のアップそして五輪招致景気等でデフレを脱却し、物価上昇、景気回復を目指すには、賃金が上昇し国民全体が景気回復を実感する事が必要不可欠だと思う。
しかし実際は景気回復を実感するどころか、物価上昇や消費税増税により負担が増え家計は苦しくなるだろう。そうなると経済は完全に失速してしまう。
そうならない為に政府は4月からの消費税率引き上げを前に、賃上げした企業の法人税軽減の拡充を決め、賃金上昇を経済団体や各種の業界団体を通じて、各方面に要請した。
その結果、当社にも商工会議所を通じて賃上げの要請があった。
しかしアベノミクスにより景気回復の動きが強まっていると言っても、我々中小企業や庶民にとっては、まだまだ「実感なき景気回復」と言わざるを得ないのが現状ではないか!?
国内の消費低迷、円安による原材料の輸入価格上昇や、電気料金等光熱費の上昇の影響、そのコストの上昇分を販売価格へ転嫁することの困難さ、金融動向、アジア企業の台頭など、むしろ不安要素の方が大きい。 そもそもアベノミクス自体が虚像なのか実像なのか、まだ分からない状態だ。
そこに来て賃上げ要請だ。
賃金というものは、一度上げれば業績が落ちても下げにくい、また法人税減税は一時的なものと考えると会社の負担も大きい。今後不景気になった時の為に内部留保のことも考えなければならない。
それに賃上げを行い相対的な売価に対する利益率を下げれば、純資産経常利益率や自己資本比率の評価基準ポイントが前年対比で下落するであろうし、そうなると対外的信用の評価までも経理面や会計上においては変わる可能性がある。
このように経営者の視点で考察すると、景気の先行きが見通せない現段階で賃上げに踏み切るには、それなりの覚悟がいる。
では一方、社員の視点から考察してみると、どうだろうか?
4月から3%消費税が増税される。という事は給料が政府により減額されるのと同じ事だ。その増税分は我々国民の社会福祉財源の充実と安定化の為に使われるのだが、そうは言っても目の前の賃金が増税分目減りすれば、気持ちも表情も暗くなるのが人ってものだろう。
日本全体が沈んでいれば「仕方ない」と割り切れるだろうが、アベノミクスの恩恵を受けた輸出企業や大手企業では、賃上げがされる予定だ。
そんな中、「当社は賃金UPナシ!」となると、社員の心に会社に対して諦念が生まれ、モチベーションは下がることになると思う。
中小企業では社員1人1人の役割や存在がとても大きいので、社員のモチベーションがそのまま会社の雰囲気となり、売り上げにも反映するだろう。
企業は「社員」があっての企業であるから、社員が元気でない会社に成長は無いと考える。
元気な中小企業であるためには、社員のモチベーションを下げない事が重要だ。
大手企業でも賃上げナシ、もしくは賞与UPに留まる企業がある中、一中小企業である我が社が積極的に賃上げを行えば、その経営者の想いを分かってくれない社員たちではないから、モチベーション維持以上の何かが結果として生まれてくると私は信じて疑わない。
今期当社は新規事業のプロジェクトも控えており、そちらへの資金投入も大きいこの時期に賃上げを行うのは正直言って楽ではないが、敢えてこんな時だからこそ、その先の将来の為に経営者と社員が一丸となって元気に進んで行きたい。
よって当社は平成26年4月分から、パート・アルバイトも含めた全社員の基本給を3%アップすることとする。