本年は伊勢神宮の第62回式年遷宮の年である。
20年に1度正殿を建て替え、御神体を新たな社殿に遷す「遷御の儀」が行われる。
ところで私が初めて伊勢神宮に参拝させて頂いたのは、40年前の第60回式年遷宮の年である。小学6年生の修学旅行であった。
厳粛で静謐な空気。青々と茂る見事な木々。凛とした真新しい社殿。そこはまるで俗界から隔絶された世界のようであった。
幼少の頃より祖母に連れられて神社・仏閣の類いはたくさん参拝していたから尚更この場所が何か特別な存在であることが子供ながらに感じられた。
前置きが長くなってしまったが、実は当社は今回の式年遷宮に間接的にだが、少しだけ関わりを持たせて頂いているのである。
というのは遷宮に際して、3年前より始まった社殿建築に使用する材木の切り出し後の保管養生に、当社の毛布をご使用いただいているのである。
当初、現地の伊勢神宮御用達の代理店さまより、「今回は寝具として使用するのでは無いのだが、丈夫で燃えなくて水分を含んでも腐らず、尚且つクッション性のある真っ白い毛布はありませんか?」とご連絡を頂いた。
毛布を寝具に使用しないのなら一体何に使用するのだろうかと、お話を詳しく伺うと上記の内容をお聞かせ頂いたのである。
そこで当社の難燃毛布はカビや雑菌等に因る生化学分解や腐食性に優れていることに加えて、国土交通省や消防庁の公的機関より正式な認可を頂いた難燃性であること。また色展開に白が有ることをご説明差し上げた。
するとすぐさまテスト用のサンプル毛布の送付依頼を受けた。
日本人にとって伊勢神宮は別格の存在である。
その伊勢神宮の遷宮に当社の毛布を使って頂けるのならこれほど光栄なことはない。
グループ内の「紡績、織屋、起毛屋、ミシン屋さん等」に事情説明の連絡を入れると皆さんも喜んで、「こんな仕事をさせて頂けるだけで有難い。無料でもいい!!」と言い出す始末であった。
サンプルを提出後4~5日してオーダーを頂いたが、この時ほど自分の首がキリンのように長く感じたことは無かった。
「無料でいいよ」と言った皆の言葉は本心であったが、しかし無料というのは代理店さまにも失礼にあたるし、生業と為す商いの道にも背くことになり、ましてや神意に背くことになるのではと考えた。
しかし縁あって式年遷宮に係わる仕事をさせて頂け有難く思っている気持ちをどうしても氏神様にお伝えしたかった。
そこで商売とは別の次元で、皆でお伊勢さんに「お供え」させて頂こうと提案しグループ全社から大賛同を頂いた。
一般の参拝の方たちに混じり授与所で名乗らずお供えさせて頂いた。
それですぐ帰るつもりであったが、祈祷を受けに来た者と勘違いされたようで、思いがけずも有難くご祈祷を受けることになった。
御神前に捧げられる高雅な雅楽や舞に見惚れながら、日本人としてまた企業家として、遷宮に係わる仕事を頂けた喜びを噛みしめた。
このような仕事を頂けたのも、創業以来たくさんの方々の支えが有ったからだと感謝し、またこの事は私も含めてグループ内の社員全員の「働きがい」や「励み」にもなると思い、ブログに書かせて頂いた次第なのである。