私の師匠、東建コーポレーション(株)の左右田社長とご一緒させて頂いた時、こんな事があった。
東建と一口に言っても全国に支店があるし、工場も沢山あるし、グループ会社も数多くあるし、カントリークラブや温泉だってある。
その中の一つの会社に社長が訪れた時のこと。
社長が幹部社員に注意を与えている場面を拝見した。
夏場だというのにどのトイレの便座にもヒーターが入っていたらしく、社長はその事について苦言を呈されていた。
断じて言うが、社長はケチなお人では決してない。むしろその真逆の代表みたいなお人だ。
それ故その社長が「小さな無駄」に注意を向けていたことに驚いた。
けれども考えてみれば、真夏の便座ヒーターなど無駄の骨頂。
しかも東建グループ全体の便座の数を考えれば1,000ヶ所はゆうに超える。
「塵も積もれば山となる」である。
小さな無駄と思っていたものは、実は相当な金額の無駄であったのだ。
突き詰めて考えれば無駄な費用を使う事は、お客様の買価にも繋がる。
大企業であればあるほど、小さな無駄でも積もって大きな無駄になる。
いや、中小企業であっても「小さな無駄」を毎日毎月毎年見過ごしていると大きな無駄になる。
左右田社長が苦言を呈されるその場面を拝見し、経営者とはこんな細やかな事にまで注意して日々を歩んでいくものなのだなと重ねて感服し、自らももっと細心の注意をはらい精進して行こう!と心に誓った。
それ以来、それまでは小さな事だからと曖昧にしていたことも、そこに「無駄」はないのか?とたえず見直すようになった。
商売とは面白いもので、1000万円の収入があっても900万円の支出があれば100万円の利益であり、110万円の収入でも支出が10万円なら、利益は100万円で前者も後者も儲けは同じなのだ。
まぁ当たり前の話である。
しかし売り上げを増やす事の方にばかり意識が行き、目の前の無駄が見えなくなっている経営者も少なくはないだろう。
いやはや、かって私もその一人であった。