今から6年前に、あのシャープの破錠寸前の今の状況を誰が予測できたであろうか?
当時は液晶テレビの普及の全盛時代で、特にシャープの亀山モデルはシェア№1の大人気を博し、手に入れようと思っても数か月待ちの有様であった。
その後、あまりの売れ行きに増産体制に拍車が係り、地デジ化移行時の楽観的な販売予測も相まって、経営陣が完全に市場に対して錯覚を起こして「永遠に売れるもの」と勘違いをしてしまい、総投資額1兆円ともいわれる液晶工場を建設したのである。
しかし液晶工場が完成する頃には、思いのほか地デジ化買い替え需要が伸びないまま地デジ化移行も終了してしまい、さらには海外の低価格商品の国内大量流入もあり、結局は大きな有利子負債を抱えて稼働しないまま身売りを余儀なくされることになったのである。
そこで私は経営者の端くれとして、また同じ製造業として、シャープの二の轍を踏まない為にもこの問題を自社に置き換えて、その解を考察してみた。
まず高いシェアは強い販売力を持った代理店網が支えてくれるからであり、その関係で競合メーカーが少ない時には参入障壁やコマーシャルの効果で売り手寡占が進みヒット商品となる。
しかし、それは長くは続かないことを経営者は知っておかなければならない。
今の時代、売れるとみるや数か月を経ずして次々に競合メーカーが新規参入してくる。
グローバルになった昨今においては新興国の台頭は著しいものが有り、低価格商品も参入して来る。
そうして品数も増えて選択肢が多くなると、必然的にシェアは下がる。
よしんば価格競争を勝ち抜いて高いシェアを守れたとしても利益は減少する。
そうなる前の戦略として、右肩上がりに売れている時期に「次の一手」として、その商品の差別化を図り価格を下げずグレードを上げて老舗として王道を歩むか、もしくは新規開発商品の投入や新規事業の展開等のスタートをきるべきである。
そのことから考えても「企画」というのは大変重要である。が、中小企業では大手のように単独の企画部を作るのは難しい。
そこで当社では、現場経験者を営業に、営業経験者を現場に配置転換するなどをし、経験を生かした上で新たな視点で企画検討が出来るよう組織作りをしている。
また事業計画は余力を残して行うべきものであり、社運を掛けるような最大限のパワーを使うことは、よほどの勝算が無い限り自重しなければならない。
またどんなに自信の有る事業計画であっても臨機応変に時代の変化に合わせ、「世間体」や「意地」に捕らわれず中止する決断力や勇気が必要である。
経営者は今の時代を生き残るために、事業全体のマクロ的な事から、例えば備品費の節約などのミクロ的なことまで取りこぼしなくたえず見直す遂行力が必要である。
たとえ主力商品であっても、利益を上げている部門であっても、たえず見直す事。
そして永遠に売れ続ける物は無い!と自覚して、「次の一手」を打ち続けることが会社を存続させる為の策なのである。